2017年6月2日金曜日

『図書館の神様』 瀬尾まいこ さん著

学校図書館書籍の紹介

発行所:(株)筑摩書房

 瀬尾先生の作品は読みやすく展開も面白くて「この次どうなるんだろう」といつも期待してしまいます。ずっとバレーボールに情熱を注いでいた主人公が、ある事件をきっかけとしてバレーからも自分の町からも離れ、田舎の高校の臨時の教員となります。教員の仕事に対する意欲は極めて曖昧で、持ちたくもなかった文芸部の顧問になるのですが、これまた顧問としての活動意欲は全くありません。でもそこで、唯一の部員である男子生徒と出会い、暖かみのある優しいストーリーが展開されます。

 瀬尾先生が描く登場人物には、初めは自分勝手であったり、ワガママであったり、と疑問符を感じる行動をとる人もいますが、本心はとてもいい人ばかりで、物語が進んでいくと心が穏やかになれます。この作品もそのようです。
 
 とても素敵な作品なので高校生だけでなく先生方にも読んで欲しいと思いました。
 

 

『ハルフウウェイ』 北川悦吏子 さん著

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 発行所:(株)幻冬舎
 
 2009年に映画にもなりました。ハルフウェイとはハーフウェイ(すなわち途中のこと)です。巻頭の「物語の途中って・・・。これからまだ展開するよ。良い方に。ハッピーエンドにむかって・・。」がこの小説全体を表していることを次第に感じてきます。

 まさに高校生の純愛ここにあります。高校3年生になって主人公は地元の大学へ、最愛の彼氏は東京の大学へ進学を希望するという、割とありふれた状況下での心の動きがダイレクトに伝わってくるでしょう。

 ちょっとストーリーが単純すぎる?いえいえ、ラストシーンはいつまでも映像のように脳裏に焼き付きますよ。表現もわかりやすくて読みやすくて高校生にお勧めの小説です。


 

『君にさよならを言わない 2』 七月隆文 さん著

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 発行所:(株)宝島社
 
 映画化もされ100万部を越えた「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」で大注目の七月先生の作品です。タイトルからもわかるように「君にさよならを言わない」の続編ですが、前作を読まなくても十分に楽しめる作品です。難しい表現も全くなく、とても読みやすくて、まるで映画を視ているように情景が目に浮かびます。小説を読み慣れていない私でも数時間で読み終えました。

 幽霊が目に見えるようになった主人公が、幽霊やその関係者のために行動することで、みんなの心を暖かくしてゆきます。とくに最後の2~3ページが感動的で心に残ります。気軽に読めて、しかもジーンとなる作品なのでぜひとも読んでみてください。


『記憶屋』 織守きょうや さん著

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発行: (株)KADOKAWA

 第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞した作品です。依頼によって人の記憶を消してしまうという「記憶屋」、単純にホラーというジャンルではなく、SFの要素もラブストーリーの要素もふんだんに取り込まれています。また複数の一見独立したように見える物語がリンクしており、次第に、最初は単なる「都市伝説」であった記憶屋の正体にだんだんと近づいてゆくという探偵小説の要素も含まれています。

 複雑なパズルをゆっくりと解くのが好きな人にはお薦めかもしれません。みなさんは、人の記憶を消してしまうことを「悪」と思いますか?


『戸村飯店 青春100連発』  瀬尾まいこ さん著

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発行所:(株)理論社

 見た目は格好いいけれどちょっと自己中で、父親が経営する中華料理店を継ぎたくないために東京に行ってしまった「兄」。でも本当はとても良いヤツで、東京で過ごしているうちにその人間性の良さがどんどん行動に表れてきます。対照的に「弟」は、父親の後を継がなければという使命感から大阪に残り、周りの人から愛され続けます。しかし最後に予想外の波乱が・・。

 随所に「関西弁」が表れ、吉本興業系のギャグや阪神タイガースも出てきて、やはり大阪ってそうなのかと思わず呟いてしまいます。そして、登場人物の全員が、思いやりがあって優しく個性的なので、読むにつれて心が安らんできます。こんなところが瀬尾先生のスタイルなのかなぁと感じました。疲れた時にのんびり読むのが良いかもしれませんね。


『Masato』 岩城けい さん著 (発行所 集英社)

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 父親の勤務の関係でオーストラリアで暮らすことになった家族の物語です。主人公の姉は早々と日本に戻って来たので、子どもは主人公だけとなります。上司とのトラブルから希望もしていない海外へ異動させられた父親、海外での生活がまったく合わずに早く日本に戻りたい母親、最初は英語がしゃべられず、友人もできなかった主人公、感情豊かで個性的な3人の心の動きを詳細に表しています。

 「海外勤務」や「帰国子女」と聞くと、ついうらやましく思ってしまいがちですが、「現実は相当にシビアなんだ!」と認識させられ、海外生活の現状がドキュメンタリーのように伝わってきます。著者は、オーストラリアで20年以上も暮らしていて、風景や文化などもわかりやすく表現しています。

 結末はちょっとジーンとなりますが、その内容は高校生にも気楽に読める小説だと思います。