2017年2月13日月曜日

『よるのばけもの』 住野よる さん著

図書館書籍の紹介   発行所: ㈱双葉社

夜になるとおぞましい化け物に変身してしまう主人公と、奇妙な行動と場の空気をまったく読めないがゆえに陰湿ないじめにあっている同級生さつきの関係を筆者の独特の表現で表した小説です。ラブストーリーでもシリアスでもない、いじめ撲滅の教科書でもない、どのジャンルにも属さない小説です。
 主人公は常に自分の立ち位置ばかりを気にし、クラスの中で仲間はずれにだけはならないことを切に願う”ありふれた”中学生です。そのためさつきのことを無視し続け、状況によっては嫌がらせや暴力を振るったりするちょっとだけ卑怯な生徒です。
 さつきは夜になると学校に現れ、たった一人の時間と空間を楽しんでいます。やがて、化け物になった主人公はさつきと出会い、昼間にはまったくしない会話を通じて、昼間の自分とは少しずつ違った心情と行動をとるようになります。そして、人間の姿である昼間の自分、化け物の姿である夜の自分、そこには葛藤と苦悩が・・。
 住野さんの代表作である「君の膵臓をたべたい」は悲しくて”うるうる”する内容ですが、この小説は感動で涙が自然にあふれてきます。久しぶりに小説で泣いてしまいました。どんな世代でも感動できる至極の小説ですが、できれば若いうちに読んでもらいたいなと個人的に思いました。

 

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